とあるデザイナーのライフプラン一例
先日、若い女性のデザイナーと話していてキャリアと子育ての両立の話になりました。20代から今までに迎えたライフイベントの経験が気になるようだったので、自分でも振り返ってみることにしました。
前提として今の私の子育て環境
子育ては周りの協力有無で負荷の度合いが変わります。我が家は夫と私、子供2人の4人家族です。夫は多忙な転勤族で全くリモート勤務はしておらず、家事育児は休日のみの稼働です。両家の親も遠方なので頼ることはできず、平日はほぼ私一人が家事育児担当です。ただし家事はドラム式洗濯機や電気調理器などを多用しています。都心だとよくある家族像だと思います。
経歴から振り返る
アルバイト時代に会った働くお母さんデザイナー
学生時代のアルバイト先の一つに、女性誌のデザインをする会社がありました。全社員20人程度で女性比率95%の会社でしたが、2人の女性のデザイナーが育休から復職し、時短勤務で働いていました。その光景を見ていたので、私も漠然と「デザイナーになっても子育てしながら働く」姿が想像しやすかったです。ただし、まだそこまで現実的にライフプランを考えていたわけではありません。
多忙すぎてライフプランなんて考えられない1社目
1社目はクライアントワークだったので仕事の波があり、忙しい時は二徹三徹みたいな絵に描いたような多忙なデザイナー生活でした。一応社内に産休(産前産後休業)、育休(育児休暇)、時短勤務(短時間勤務)といった一通りの制度はありましたが、利用者はおらず…その頃はライフイベントなんて想像できませんでした。
大きなライフイベントを経験した2社目
2社目はインハウスデザイナーでした。仕事は忙しくても徹夜をすることはなくなり、ライフプランを考えられる余裕も出てきました。年代は20代後半から30代前半のメンバーが大半で、ライフプランについて話す機会は多かったです。一通りの制度は揃っていましたが、産休、育休の制度を活用するのは年代的にもこれからという雰囲気でした。結果この会社で2度の産休、育休も挟み今までで一番長く勤めました。
ただ、この会社では産前と産後のギャップに苦しみました。産前は精一杯働けていた分、産後は自身の作業パフォーマンスの低下や子供の体調不良による突発的な休みもあり、満足のいく仕事は中々できませんでした。また出産年齢が少し若かったこともあり、同年代の同僚がバリバリ働き実績を積んでいく姿が眩しかったです。
あといつも子供の発熱で急に休む可能性に怯えていました。どうしても外せない出張や打合せの日を狙うかのように子供が発熱しましたので、何度か病児保育も利用しました。
しかし日々同じシチュエーションの中過ごすことで、今やるべきことは育児と仕事の両立だから同僚と比べるのはやめようと思えるようになってきました。1人目産後にマインドの切り替えで苦労した分、2人目の育休から復帰後は意欲的に働けるようになっていました。(残念ながら社内のデザイン組織が縮小し、結果転職しました)
リモートワークが増えたタイミングの3社目
3社目は再びクライアントワークの会社に入社し、時短前提で働いていました。社長も子育て中で理解があったことやコロナ禍で社内にリモートワークが浸透したことで、子供の発熱は休んだり、在宅勤務に切り替えたりすることができました。様々なお客様とお仕事をすることにより、この頃やっとデザイナーの勘が戻ってきました。しばらくお世話になろうと思っていた矢先にまた色々あり、転職することになりました。長引くコロナ禍もあり苦戦するかと思いきや、エージェントのおかげで運よくクラスメソッドへジョインできました。まさか産後に2度も職場を変えることになるとは思っていませんでした(運は良い方だと思います)。
そしてクラスメソッドで迎えた4社目
クラスメソッドに入社して、半年以上経ちました。発熱や休園、通院といった急な対応もありましたが、フルリモートで勤務できるありがたさや社内の勤怠管理制度のおかげで、有給をそこそこ温存したまま乗り切れています。お客様との打合せが17時からということも多々あり、17時まで勤務という理想は度々崩れています。しかし自宅から会議に参加できるので、子供達は会議前に迎えに行き、テレビを見たり遊んだりして過ごしてもらっています。保育園の迎え時間を気にせず夕方の会議に参加できるメリットは親子共々大きいです。今の環境ならば自分のキャリアと子育てを両立できると感じています。
経歴以外の気になるあれこれ
情報を集めよう
妊娠、出産、子育てに関して、知っていると役立つ制度やサービスがあります。例えばあまりにもつわりが辛く仕事ができない場合の救済措置もありますし、育休中は規定を満たせば雇用保険から何割かの金額を支給されます。制度は年々変化するので、いざその時がきたら調べましょう。
そして病児保育や病児シッター、家事代行サービスやシルバー人材も選択肢に加えておくと良いかもしれません。頼れる選択肢は少しでも増やし、忙しい時期を乗り越えましょう。会社によっては福利厚生の一環でシッターサービスを割引価格で利用できる場合もありますので、確認しましょう。
社内初の制度利用は勇気がいる
2社目に在籍中、初の時短勤務利用の方がよく苦労話をしてくれました。元々時短勤務を使う人がいなかったそうで、利用希望を出すと難色を示されたそうです。最近だと時短勤務の制度を利用する方が多いことを説明したり、時短勤務の制度の情報を共有したりと、説得し認めてもらったとのことでした。私も復職後に利用したいと思った看護休暇の存在が会社で知られていなかったので、こういう制度があって使いたいという旨を人事に伝えました。社内で先陣を切って制度を活用しようとすると思いの外整っていない、 もしくは労務担当者の方が新しい制度を把握していないこともよくあります。利用を考えたらすぐ確認や交渉をしましょう。
子供は産んでからがスタート
私が妊娠前は、産休育休が終わればとか、3歳過ぎれば、とか子供の成長に合わせて子供周りのタスクはなくなるものだと思っていました。確かに日常の世話(おむつや食事の介助など)はなくなりましたし、末子の発熱も減りました。ところが来年から小学生の長子には、長期休み時の学童のお弁当作りや登校班の当番など、別のタスクが増えました。楽になったと思いきやタスクが増える…おそらくこの流れは中高生ぐらいまで続くのだろうと思います。子育ては私の産前の想像より長期戦です。
ただし出産と違って、育児は男性にも可能です。子がお腹に宿った時、男性にできることがないと無力感に駆られていた男性はチャンスです。育児参加の度合いで子供からの(妻からの)信頼は急上昇します。仕事が大変なのは妻も同じです。仕事が遅くて直接子供の世話ができなければ、家事を率先して引き受けましょう。
デザイナーとして悩むことが多い?
子供が産まれるとどうしても所帯じみてしまいます。美しいデザインには全く囲まれません。代わりに原色だらけでデザイナーの感性に反した(?)おもちゃたちがいつもそばにいます。デザイナーは生活もおしゃれな方が多いと思いますが、そんな生活と子供の喜ぶ生活を両立するのはとても大変だと思います。(私はそんなに元々おしゃれな部屋に住んでいなかったので特にフラストレーションはたまっていません…) また、美術館には中々いけませんし、夜開催のセミナーも参加できません。おしゃれな店は子供連れで行きにくいです。自分のインプット時間はグッと減りました。
整然とした環境で、目の前に美しいものしか並べないみたいな絵に描いたようなデザイナー生活はできませんが、キャッチアップは工夫すればどうにかなります。今はWebサイトもありますし、自由時間は物凄く少ないですが、捻出は不可能ではないです。私もスキマ時間を使うのが上手くなったなと実感しています。読書はもっぱら電子書籍が増えました。最近はセミナーのアーカイブ配信なども増えて視聴できるようになりました。スキマ時間をうまく利用し、少しずつでもキャッチアップしていきましょう。
さいごに
こうして振り返って書いてみると、特にデザイナーだからというわけではなく、イチ会社員としてのライフプランだとわかると思います。一社目以外は残業は減らそうの会社だったので、デザイナー特有の長時間労働で悩まされることはなかったです。
ライフプランを加味した女性のキャリアは千差万別で、私の場合もごく一例に過ぎません。ご自身のキャリアプランを考慮した上で計画し、理想に近しい人を参考にすると良いでしょう。社内に先輩がいれば、他部署であっても色々聞きましょう。今はリモートワークが浸透した会社も多く、比較的子育てはしやすくなっているかもしれません。
また子育て中は男性も育休が取りやすい、子供の発熱に休みやすい環境であれば、お互いに支え合う空気になって良いのではないかと思います。子供の体調不良で男性が休む選択肢が取りづらい会社は多くあります(夫の会社はまさにそうです)。パートナーの勤務先での子育てにおける制度の充実度も確認してもらい、共に乗り切る体制を作っておけるとより安心です。